とある岩手県民の将棋日記 〜ダークネス〜

これはこれでゼイタクな気がするよ…

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3月のブログB

今をときめく藤井聡太新四段と怪獣ヤメタランスがそっくりだと思って両者の画像を並べてみたところあんまりたいして似ていなかったので本日の更新はありません。

 

ところで歳を取ると流行についていけなくなるそうです。たとえそれが自分の好きな趣味や分野だとしても、徐々に最新のそれじゃなくてもいいやと思えてくるのだとか。私も将棋は好きなんですけど、数年前と比べて最新戦法や定跡にはあまり興味・関心を持たなくなっています。なるようになれ系ですね。おおらかだけど精密さには欠けます。

 

それとそこそこ好きなアニメの類もそうなってしまいました。少し前までは流行っている作品はたとえ観なくても、または実際観てあんまり面白くなかったとしても、なんとなく流行りそうだなとか、これなら人気を集めるのもうなずけるなとか、ある一定の理解は示せたんです。

 

でもついにそうじゃなくなってしまいました。現在大流行中の「けものフレンズ」。これがまたわからないシロモノなのです。なんでこれが流行るんだろう……。お話が面白いかどうか以前に、あのCGを乗り越えなければいけないんですよね。そしてあのCGを多くの(たぶん若い)アニメファンは乗り越えてる、あるいは苦にしていないようなのです。アニメファンはCG(とくに人物の)には辛口だったと思うんですけどね。ブレイブウィッチーズではあんなにぐちゃぐちゃ文句たれてたくせに。いつの間にこうなったのでしょう。それとも作画やCGなどどうでもよくなるくらいストーリーが面白い、とか? わからないことだらけです。

 

だいたいですよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これがよくて……

 

 

 

 

 

 

これがダメ……?

 

 

 

 

 

 

これがよくて……

 

 

 

 

 

 

これがダメ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どっちもダメだと思うんですけどね!!

 

 

 

おじさんにはわかりません!

 

 

 

でも吉崎観音が描く元絵はかわいいので、普通に手書きアニメだったらなんなく観られたと思います。そっちのほうが間口が広がっていいのになぁ。CGアニメだから流行ったわけでもない…と思いたいんだけど……。やっぱり歳を取ったんですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜おまけ〜〜

 

 

 

あんまり似ていなかった画像。

 

 

 

 

 

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3月のブログA

久保が王将になったから頭痛と吐き気と動悸と息切れが激しいので本日の更新はありません。

 

それはそうと昨年12月に盛岡市内にオープンし、ひそかな人気を集めているパン屋さんに行ってきました。とある大食いチャンピオンの女性が開業したとのこと。岩手大学の近くらしいのですが、ここいらの地理にはあんまり明るくないので辿り着けるか不安でした。いざ車を飛ばして行ってみると交通量が多く、付近の道路も工事中とあってもらい事故にでも遭いそうでひやひやしました。なかなか見つけられなくて途中で引き返そうかとも思いましたが、そうすると

 

 

 

タイトル:大人気のパン屋さん見つけられず……

 

今日は大食いチャンピオンのパン屋さんに行ったんだけどついに見つけられませんでした〜〜>< 今度こそ見つけてたくさん食べてやるぞぉ〜〜〜〜!(◎ p ◎)ノ

 

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などといったブログを書くハメになるので意地と根性で探しまわることにしました。

 

そしてその辺をのろのろうろうろ走ることしばらく。見つけました。見つけましたよやれやれ。1台のみの駐車スペースに車をねじ込み、ほっと一安心。小さな店内は……香ばしいパンの香りでいっぱいでした。噂の大食いチャンピオンさんもいらっしゃいました。うん、確かに数年前テレビで見たことある人です。

 

パンのラインナップはコテコテのハード系。あんまり子供に好かれない系とか意識高い系とかお高くとまってる系とか言っちゃいけません。その辺で売ってる食べやすい菓子パンなどお呼びでなく、小麦の恵みを全身全霊で受けとめたい人のためのパンばかりなのです。自家製天然酵母だしね。価格も半端じゃなく、小さいのでも300円前後。大きいものになると1000円を軽く超します。私が購入したチーズのなんとかってのはまるでラグビーボールみたいでしたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超ド級ですねぇ。重さもその辺の猫くらいあるかもしれません。

 

食べやすく切って(切るのがまた一苦労)、オーブンで軽く焼いて食べてみました。

 

 

 

…………。

 

……………………ッ!?

 

 

 

こ、この味は!? 優しさと温もり、そして懐かしささえ感じるこの豊かな風味。2口、3口と噛み締めるほどに素朴な小麦の生命の味が口の中に広がって、全身を抱きしめてくれます。夢中で食べ続けるその果てにあるものは……。意識が忘却の彼方へ飛んでゆきます。

 

気が付くと、澄み渡る青空に柔らかな太陽が輝き、あたり一面が若々しい緑の草花で生茂る広い草原に立っていました。心地よい風が頬をやさしく撫でて通り過ぎて行きます。遠くにぼんやりと誰かが立っています。霞んでよく見えません。女の子でしょうか? 白っぽいワンピースを着ているようです。何かしゃべってる、ような? 遠くて聞こえないはずの声が直接頭の中に響いてきます。

 

「ずっと、待ってたのです……」

 

え? どういうこと? キミは……

 

「やっと会えた…コーチ!」

 

なんだろう、この懐かしい感覚……。キミは誰? キミの名は…?

 

視界が徐々にぼやけ、空も大地も、遠くの少女もほとんど見えなくなっていきます。なぜだろう、どうしてだろう。涙が止まりません。ここから離れたくない気持ち。寂しさと哀しさがそうさせるのでしょうか。

 

意識を取り戻した今、私は食べ終わったパンに感謝しました。素晴らしい世界を見せてくれて、ありがとう、ありがとう、と。そして心は満たされ、世界の全てを愛おしく感じるようになっていました。こんな風に人は変わってゆけるのなら、それはとても素敵なことだと思います。それにしてもあの風景と少女はなんだったのでしょう? 前前前世の記憶?

 

値段が高くても見た目が硬そうでも、食べてみればその良さは直感的に分かります。超ド級の感動とダイナミックなパンの神髄がありました。大いなる愛に包まれた幻想を見せてくれて、ありがとうございました。また来ます。それと新海誠のアレはまだ観ていません。

 

 

 

 

 

カンパーニュ

https://withwitch.com/

 

 

 

 

 

 

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3月のブログ@

みなさんこんばんは。愛と勇気に溢れる輝かしい21世紀をいかがお過ごしでしょうか。東京オリンピック2020が楽しみですね。むぎまるです。

 

数ヶ月の休養を経て、ぼちぼちブログを再開しようと思います。人間、休む時は休まなければいけません。2016年によく聞いた曲で「みんながみんな英雄」というのがあるんですが、その歌詞のなかで、「走っては休んで 休んでは休んで」という部分があります。本当に現代的で良い歌詞ですよね。そんなに気張らずに行こうよ的な。気に入ったのでカラオケのレパートリーに加えました。これが昭和の時代なら水前寺清子の「365歩のマーチ」の中にあるように「休まないで歩け」と鞭打たれていたところです。殺 す気ですかと。どこのブラック企業だよと。

 

そろそろ話題を切り替えないと全豹一斑でボロがでそうなのでこの辺にしておきます。まあとにかく再開です。タイトルも少しいじりました。「とある岩手県民の将棋日記 〜ダークネス〜」。ダークネスですよダークネス。なのでちょっと矢吹的なアレを期待する方もいらっしゃるかもしれませんが、そういうのではありません。単なる気分です。むしろ以前よりだいぶ手抜きで書くのではっきり言ってグレードダウンになるでしょう。インクの染みみたいなマンガの類もありません。なので駄文をスクロールですっ飛ばして下の方にあるマンガだけ読むといった進研ゼミのパンフレットのようなことをする必要なんてないんです。

 

本当はもうちょっと早く再開する予定でした。でもほら、あの事件がね……。なんであんなことになっているんでしょうかね、将棋界。だいたいですよ、最初の一報の時点で胡散臭かったですよ。案の定、大方の将棋ファンはおかしい怪しい三浦は白と言っていました。さすがですよね。将棋で鍛えられた思慮深さは伊達ではないということです。わたしだってさすがに三浦はやってないだろうと、何かの誤解か誰かの策略だろうとにらんでいました。

 

あの時期にブログを続行していたら、この話題に触れていたと確実に予想できます。でもやってなくて良かったと思います。おそらく三浦は白と書いていたでしょうが、ほんの僅かに逆張りというか、競馬で言うと大穴狙いで三浦は黒と書き連ねる悪魔のささやきも微レ存(死語)でした。大勢に流されないオレかっけー的なアレで。もしそんな記事を書いてしまっていたら……

 

 

 

 

 

は?ふざけんなマジで。三浦はやってねーっつーの!はめられただけ。悪いのは久保渡辺千田橋本島谷川。こいつら全員死刑。そんなことも分からないからおめーはクソムシなんだよ!!

 

 

 

あのさ、証拠もないのに挑戦権剥奪って何?なんでんなアホみたいなことできんだろね島は。引退するのはナベだ。三浦は堂々と竜王戦会場に行けばいい。なにもおかしくないじゃん?おい、むぎまる、お前はいつ死ぬん?

 

 

 

いつも楽しみに読んでたのに、こんな低能な記事書くなんてがっかり。三浦さんは無実だよ!個人的には橋本が許せない。もちろん渡辺と久保も。まあ久保は振り飛車ばっか指してるから△6七歩成も読めない雑魚なだけなんだけど、渡辺はもうあれダメだろうね。

 

 

 

家にあった谷川の定跡書は全部捨てました。島ノートも捨てました。三浦さんを応援するためにトーチカの定跡書を買いました。それともうこのブログは読みません。さようなら。

 

 

 

むぎちゃ〜ん、ばんちゃ^^ え〜!? みうみうはなにも悪い事してないと思いますよ〜。みんなの力で谷川とか渡辺とか、本当に悪い奴らを懲らしめちゃおうよ〜〜

 

えいっえいっおぉ〜〜〜w(°o°)w

 

 

 

てめーまじむかつく。消えろ。島も片上も理事全員辞めろ。うぜぇ。

 

 

 

さっすがむぎさん!ψ(`∇´)ψ ボクも三浦はカンニングしていたと思いますよ!だって最近調子良すぎぃ!謹慎してしっかり反省してほしいです!

 

きぃぃぃぃっ!!(@゚д゚@)

 

 

 

やってない……みうみうはそんな人じゃない……

 

 

 

おい、証拠出せよ。島とかナベとか頭悪過ぎだろ。もう将棋世界買わねー。クレームの電話入れたったわwwwww

 

 

 

感動しませんでした。何もかもおかしいです。連盟もむぎまるさんも。土下座して謝ってほしいです。三浦さんのことを思うと胸が張り裂けそうです。

 

 

 

 

 

と、こんなステキなコメントで溢れかえっていたことでしょう。危ないところでした。人間万事塞翁が馬です。

 

というわけで、これから不定期で将棋や日常生活のコトをちびちび書いていくつもりです。たいして有益な情報はないでしょうけど、ほんの少しだけ気にかけてくれたら嬉しいなって。

 

 

 

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君への願いを抱きしめて

学校の屋上から見渡すこの街の景色も、これで見納めかな。夕闇に染まる空の下、私はぼんやりフェンスのそばに立ち、約2年ちょっとに及ぶ将棋部のコーチとしての生活を振り返っていました。けっこういろんなことがあった気がします。大変なこともあったけれど、楽しいことのほうが多かった。どれも過ぎてみればあっという間。もっとああしていれば、こうしていれば、と悔やまれることもあれど、最後の最後で……みなさん、やってくれました。その瞬間を見る前に私はここに来たけれど、よしかさんのあの表情を見て、優勝を確信したのです。

 

残り僅かの力……。

 

もう時間がない。急がないと。

 

その時、屋上と校舎を結ぶ扉が勢いよく開きました。そして現れたのは、息を切らして走り込んできたよしかさん。あー、気付かれちゃったか。ちはさんのウィッグが取れてる。どこかで落としてきたんだね。……でもおかしいな。もう誰かの記憶に残るような力は無くなっているはずなんだけど。

 

 

 

よしか「……はぁ、はぁ…。見つけた……! コーチ、私……私たち……」

 

むぎ「優勝……したんだね」

 

よしか「……はい! みんな頑張ったのです! ……コーチが…コーチがいてくれたから……。ううっ……なのになんで!? みんなコーチのコト忘れてるし、コーチはこんなところにいるし……!」

 

むぎ「よしかさん……」

 

よしか「次は全国だよっ! みんなの力で掴んだ全国への道! そこにはコーチもいなきゃダメなのですっ! また……またみんなで練習したい。将棋のコト、もっともっと深く知りたい。もっとたくさんのコトを、コーチに教わりたい!」

 

むぎ「……ありがとう。そんなに将棋を好きになってくれて。……でも、もうそれはできない」

 

よしか「!?」

 

むぎ「よしかさん……私はね、この世界の住人じゃないんだ。神様に……いや、死神に無理を言ってね……輪廻転生の枠から外してもらって、わずかな生命をもらって存在している……」

 

よしか「な、なにを言ってるのです……?」

 

むぎ「いわば、幽霊なんだよ」

 

よしか「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

むぎ「本当はもっとややこしい事情なんだけどね。かいつまんで言うとそんなところかな。そして、そのわずかな生命の力が消えかかると、関わった人の記憶からも自分の存在が消えるって条件だったんだ。……ごめんね、今までずっと隠してて」

 

よしか「そんな……コーチ…………。でもどうして? どうしてそうまでして生き返って、私たちに将棋を教えてくれたのです?」

 

むぎ「それが、私の願い……夢だったからだよ」

 

 

 

今にも泣き出してしまいそうな顔をしているよしかさん。私は構わずに話を続けます。

 

 

 

むぎ「将棋ってね、戦争を模したゲームなんだよ。いわば戦争から生まれたわけ。でも人間の知恵ってすごいよね。出自は戦争でも、今や平和を象徴するゲームになっている。将棋を楽しんで、そこから交流が生まれて、みんなが笑顔になって。銃弾が飛び交う世界では、安心して将棋すらできないからね。今日の大会も、普段の部活だって、穏やかな日々の中の、かけがえのない一幕なんだよ」

 

よしか「はい……」

 

むぎ「よしかさんも気付いているんじゃないのかな。将棋は勝負であり、ゲームであり、学問であり……。いろんな捉え方があるけど、なんでかな、どうやっても最後には……人の心があるような気がするんだ。将棋からとても温かいモノを感じる……。そう、思わないかい?」

 

よしか「わかります。私も同じものを感じているから……。今日の将棋でも、たくさんの温かいモノを感じたのです。考える悦びと、心と心が通う奇跡の瞬間を……。ひとりだけど、ひとりじゃなかった」

 

 

 

そこまで理解しているなんて。この子に教えることができて、本当に良かった。

 

 

 

むぎ「だから私はここに来た。将棋の心を教えるために。それがゆくゆくは夢や希望となり、この世界を幸せにしてくれると信じて。……私が生きていた時代は、ちょっとひどかったからね。もうあの時の二の舞はごめんだよ」

 

 

 

あまり思い出したくない私の過去。時代のせいだけじゃないけれど……。多くの人が悲しい思いをした。なにひとつ守れずに。大切な人たちを悲しませてしまった。そして撃たれて死んでしまう瞬間に死神と契約してしまったこと。こんな情けない魂でも、少しばかりの償いになればいい、と。でもそれだけじゃない。

 

 

 

むぎ「始めは誰も来てくれなかったらどうしようと不安もあったけど、よしさんやふうかさん、アキトくん、ミツルくん、ケイスケくん……。そのほかたくさんの生徒が集まってくれて、本当に嬉しかった。それだけでも満足なのに、優勝までしてくれた」

 

よしか「そ、それならこれからも……」

 

むぎ「いや、もう力が残っていないんだ。この世界に存在できるだけの力が。そして私は……無へと還る。それが、死神との契約だったからね。……でも、最後に抗おうと思うんだ」

 

よしか「えっ?」

 

むぎ「残された力を振り絞って、最後の願いを叶えるんだ。ほんのちっぽけな願い事だけど、もう、誰も将棋で悲しい思いをしてほしくないから……。将棋で絶望してほしくないから……。時には負けて、辛くて悔しい思いをすることはあるだろうけど、それでも……いろんな感情を全部抱きしめて、最後には……幸せな記憶になってほしいから」

 

 

 

そう、誰一人、将棋で不幸せになってほしくない。

 

将棋やってて良かった。将棋最高って、みんなが胸を張って言える世界……。

 

そのお手伝いを、ちょっとだけしてみます。

 

私の魂を、将棋に還元するのです。

 

 

 

むぎ「この世界の人々が、ずっと将棋を好きでいてくれますように」

 

 

 

よしかさんに背を向け、距離を取り、両手を高く天に伸ばし、ありったけの生命力を込めます。ぼうっとした白い光が私の周囲に広がります。切り裂くような強い風。細く青白い電流。くっ、身体が重い。よしかさんが何か叫んでいます。でも全く聞こえません。

 

……やはり、力が足りないか。みんなの優勝を見届けて、なおこの願いを叶えようなんて……都合が良すぎるもんなぁ……。

 

 

 

むぎ「はは……ダメみたいだ。でもいい。これでも十分だ。さようなら、よしかさん。今までありがとう」

 

よしか「……コーチっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

振り向くと、片膝をついて倒れ掛かっている私の元へ、よしかさんが駆けつけようとします。風圧や電流の渦中へ……。

 

 

 

むぎ「……危ない! 来ちゃダメだ! よしかさん、もういいから!」

 

よしか「ああああっ! ……コーチ! コーチッ!!」

 

 

 

バチッ……バババババッッ!!!

 

 

 

よしか「んん…んああっ! ……こ、これは……コーチの過去!? 空を飛んでる? あっ、後ろ! 危ない!」

 

むぎ「はは、精神干渉かなんかで、私の死に際のイメージが映ってるのかな。恥ずかしいからあんまり見ないでよ」

 

よしか「撃たれた……火を噴いて…落ちて行く……。あれにコーチが乗ってるの?」

 

むぎ「うん。おんぼろの二一型じゃ、P−51Dにはどうしようもなくてね……。私の腕も未熟だったし。死ぬほど熱かったよ。ああ、震電さえ完成していれば……」

 

よしか「んううううっ!! ……もう少し、あと少し……!」

 

 

 

全身の痛みを堪えて、じりじりと近づいてきます。すでに体力を使い果たしているかもしれません。それでも、やっとの思いでよしかさんは私の背中にもたれかかります。腕を伸ばし、包み込むように寄り添って……。

 

 

 

むぎ「……どうしてこんなになってまで……。よしかさん、キミは一体……?」

 

 

 

横から顔を覗かせ、絞り出すような声で答えます。

 

 

 

よしか「コーチとお別れするのはイヤだけど……コーチの夢が叶わなくなるのはもっとイヤなのです!」

 

 

 

…………!!

 

 

 

よしか「コーチの夢……。私もそばで、一緒に叶えたい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トクン……と、心臓の跳ねる音がした。

 

この気持ちはなんだろう?

 

よしかさんとの思い出が、一気に溢れだします。ドジで気が弱くて、健気で頑張り屋さんで。小さくて、かわいくて。変なところで度胸があって、優しくて気配りができて、下級生の面倒見が良くて、将棋と楽しそうに戯れる姿が眩しくて。頭をなでると嬉しそうにもじもじして、私が部室に顔を出すと、いつも笑顔で出迎えてくれて。いつでもどこでも将棋が大好きで。

 

トクン、トクン、トクン……。

 

だんだん激しくなる心臓の音。

 

安らぎを感じるかわいい笑顔。つられて自分も笑顔になって。あんまり楽しそうに指すものだから、まるでこっちが将棋の楽しさを教わっているみたいになって……。温かな気持ち。ずっとそばに居たくなるような、幸せな気持ち。

 

ああ……。

 

ああ、そうなんだ……。

 

やっと気付いたんだ。自分の、本当の気持ちに……!

 

私は……よしかさんのことが……

 

 

 

 

 

ドウゥゥンッッ!!!

 

 

 

 

 

身体中から溢れだす力のまま、よしかさんへの想いを乗せて、最後の力を振り絞り、漆黒に染まりかけている空へ高く高く解き放ちました。よしかさんが傷付かないよう、ギュッと肩を抱きながら。離れてしまわないように。大切なモノを守るように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬、意識が飛んだかと思ったら、なんにもない真っ白い世界が広がっていました。目が慣れると、地球全体を展望できるほど高いところへ浮かんでいました。地上から数万キロメートルはあるでしょう。空気がなくても、意識だけの幽体的な存在になっているので大丈夫です。いわば人と将棋を繋ぐ幸福の概念になったのですから。私の願いは実を結んだようです。私はこうして地球の周辺を漂いながら、将棋を愛する全ての人たちを見守る存在になるのです。

 

……でも、なんかくっついてきちゃいました。私の腕の中で意識を失っています。おかげさまで、と言いたいところだけど、本当に一緒に来るとは。ここ一番での度胸はほんとすごい。そっと頭をなでます。サラサラの長い髪。2年前からずいぶん伸びました。

 

そのなんかが意識を戻します。すぐそばにいる私の顔を見るなり、安心したような表情を浮かべます。怖がらせてごめん。勇気を振り絞って付いてきてくれたんだね。ありがとう。もう、自分の気持ちにウソはつけない。胸の奥底から滾る純粋な想いを今、言葉にします。

 

 

 

 

 

むぎ「よしか。好きだよ。世界中の誰よりも……愛してる」

 

 

 

 

 

驚いたと思ったら急に顔を皺くちゃにして、ポロポロ涙をこぼすよしかさん。私の胸に顔をうずめてひとしきり泣いた後、頬を染めて静かに言いました。

 

 

 

 

 

よしか「私も……世界で一番…コーチが好きです」

 

 

 

 

 

澄んだ目。優しい口元。

 

もっと早くに、この気持ちを伝えておきたかった。自分の鈍さがほとほとイヤになります。

 

 

 

むぎ「でも……よしかさんは戻らなきゃ。ほら、あそこを見てごらん」

 

 

 

そういって指差す下界には、懸命に学校の屋上へ走ってくる将棋部のみんなの姿が。望遠レンズで拡大したかのように鮮明にその様子が浮かび上がって見えます。よしかさんを追って、会場から走って来たのでしょう。ヘトヘトになってますね。あ、ちはさんこけちゃった。ちょっと泣きべそかいてる。ミツルくんとアキトくんが励ましてる。また立ち上がって走り出した。頑張れ。

 

 

 

よしか「ふうかちゃん……。ちはちゃん……。みんなも……」

 

むぎ「いい仲間を持ったね。みんなよしかさんが大好きなんだよ。これからも楽しい事がたくさんある。大切な仲間たちと一緒に、大切な時間を過ごすんだ。よしかさんの未来はこれからなんだから」 

 

よしか「それじゃコーチはこんなところで、ひとりで永遠に彷徨い続けることに……。そんなの寂し過ぎるよ……!」

 

むぎ「ふふ、寂しくなんかないよ。みんなが楽しそうに将棋をしている姿を、ずっと見守っていられるんだからね。みんなが笑顔でいてくれれば、それが一番嬉しい事なんだよ」

 

よしか「でも……コーチと会えなくなるなんて……イヤだよ」

 

むぎ「ううん、会えるよ。いつでもどこでも、将棋の中にいるから」

 

よしか「そんな……やっと……やっと想いを伝えたのに……! これから、私の夢が始まるのに……!」

 

むぎ「よしかさんの……夢?」

 

よしか「私の夢はね……」

 

 

 

視界が霞む。もう限界か……。いいよ。最後まで、よしかさんの声を聞いていたいから。なんでも言って。

 

 

 

よしか「コーチのお嫁さんになることです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

むぎ「そっか。それは……叶わなくなっちゃったね。でも、どこかの誰かが言っていたよ。夢はふたつ持ちましょう。ふたつあれば、ひとつが叶わなくなっても、もうひとつが残るからって。よしかさん。新しい夢に、生きてほしい。キミにしかできないことが、きっとあるはずだから。あせらなくていい。ゆっくり歩いて行くんだよ」

 

 

 

目の前に広がる幻想的で美しい風景。澄みきった青い地球。穏やかな光を反射させている白い月。遠くで煌々と輝く太陽。小さく瞬く無数の星。それらを包み込む深遠なる黒い空間。これが、よしかさんと一緒に見る最後の風景になります。

 

背中に腕をまわし、ギュッとしがみついて離れないよしかさん。別れたくない気持ちが痛いほど伝わって来ます。お嫁さんにはできなかったけれど、これくらいなら……してあげられる。肩を掴んで少し距離を取り、互いに顔を、目を見つめます。

 

そして一呼吸置いて、目を閉じるよう促して……。

 

 

 

よしか「……あっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不意に感じたコーチの鼓動。嬉しいはずなのに、胸が苦しいような、切ないような。トクンと高鳴る胸の奥。コーチの体温。優しい匂い。ふたつの心が、近づいて、溶けていく。想いが、心が、ひとつになって。大好きな人と繋がっていく。ずっと一緒。何も怖くない。幸せだから。生きているから。私も、コーチも。いま、この瞬間……煌めいて、生きている。

 

さよなら……私の愛しい人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こども1「ねーねー、早く〜、こっちだよ〜〜〜」

 

こども2「今度は私とだよ! ね、約束したもんねー!」

 

よしか「はいはい、いま行きますよ〜」

 

 

 

ここはいつもの場所。倉持将棋クラブ。私は今、小さな子供たちに将棋を教えるお手伝いをしています。やんちゃで元気な子供たちと接するのって、意外と大変なのです。

 

ふう。あの出来事の後、私は学校の屋上の片隅に倒れていたそうです。駆けつけたふうかちゃんたちが介抱してくれました。すぐに意識は回復したから大事にはならなかったけど。やっぱりみんなはコーチのコト、覚えていないみたい。でも、コーチの教えは残っているみたいで、勉強した覚えはないのに自然と手が浮かんでくることがしばしばあるそうです。そして、前よりもっと将棋が楽しくなったって、口をそろえて言います。大会に来た人や町道場の人たちも同じことを言います。

 

そしてそして、いま、約20年ぶりの将棋ブームが巻き起こっているのです! 信じられないほど将棋ファンが増えました。初心者も有段者も、アマチュアもプロも、みんなが最近将棋が楽しくって仕方がないって喜んで指しています。これって、もしかして……。

 

子供たちの相手が一段落しました。ビルの屋上で風にあたってこようっと。季節は秋と冬の境目。もうすぐ雪が降るかもしれません。ちょっと寒いけど、将棋で火照った身体を冷やすにはちょうどいいのです。

 

ふう、心地よい風。見渡す街の風景。晴れているけど、やっぱり肌寒いなぁ。地区大会の後、短く髪を切ったから余計に寒く感じるのです。一年生の時に戻ったみたいだってみんなからは言われます。でもこれ、コーチと初めて出会った頃の髪型なのです。だからお気に入りなのです。

 

あ、そうそう、全国大会。へっへ〜、なんと私たち、優勝しちゃいました。ぶいっ。無名の弱小校が優勝しちゃったものだから、結構取材されちゃった。試合中にあの水色のハンカチを何度も使ったから、ハンカチ王女って変なあだ名つけられちゃったし。これ広めたの、ショウイチくんだっていうウワサです。おかげで今でもたまに言われちゃいます。

 

さて、そろそろ戻らなきゃ。コーチとの約束。新しい夢に生きること。それがなんなのか、まだはっきりとは分からないけれど。わたしにできることなんて、ほんのちっぽけなことかもしれないけれど。こうしてみんなが笑顔になれることをひとつずつやっていこうと思う。楽しそうに盤上を駆けまわる子供たちの笑顔に囲まれて。めぐりゆく季節の柔らかな風に想いを乗せて。出会いと別れを繰り返して。盤の中に、駒の中に、コーチの心を感じる。だからいつでも会えるね。

 

コーチが愛したこの世界で、私は今、生きている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よしか「コーチ……よしかはここにいます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これからも、ずっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よしか「ここに、います」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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わたしにできること

 

ぴょこぴょこ揺れるちはちゃんのウィッグ。うー、なんだか邪魔くさいな……。でもコーチってば、声には出さなかったけど、かわいいって唇が動いたの見ちゃった。えへへ、そっかー、かわいいんだ、これ。わ、すごい。身体がぽかぽか火照ってる。全身を包む温かい感じ。うん、これなら全力をだせるよ、きっと。みやながさん、お待たせ。そして、お願いします。

 

……確かにちょっと、いやかなり苦しい局面なのです。でもふうかちゃんが必死に繋いでくれた将棋だもん。きっと何かあるはず。チャンスが。希望の一手が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何手か進めてみたけど、まだ平行線。そろそろまずいのかなぁ。普通はそう考えちゃうところだよね。でも、今の私なら、これくらいなんとかできるよ。根拠はあんまりないけど、そう思えるのです。コーチはいつも言っていた。不利な局面でも絶対無理って決めつけるより、もしかしたら勝てるかもしれないと思って指すこと。最後まであきらめてはいけないこと。難しい詰将棋が解けなかった時、そっと肩に手を置いて言ってくれたあの言葉。あれはドキッとしたのです。てっきり答えを見ていいよと言ってくれるのかと思っていたのに、あきらめるからできないんだって。意外な厳しさだったけど、その目は私が必ず解けることを信じている目だった。……まあ、実戦形の5手詰めをあきらめたあの時の私はすっごく弱かったけど、それは棋力だけじゃない。それ以上に心が弱かったのです。コーチはそんな私を信じてくれた。

 

できる。できるよ。この勝負、絶対にあきらめない!

 

バシッ!!

 

 

 

 

 

アキト「オレは……一度将棋を捨てた。若気の至りで囲碁の女流棋士と混浴できると詐欺られて……。けど、将棋を捨てるなんて無理なことだった。将棋の魅力……面白さや奥深さは他では絶対に得られないんだって、離れてみて初めて気付いたんだよ。オレの身体は将棋で出来てんだよ、マジで。オレが将棋を見捨てても、将棋はオレを見捨てなかった! 覚えててくれた! そしてノコノコ戻ってきただっせぇオレを……よしか、お前は笑顔で迎え入れてくれた。本当に救われた気分だったぜ。こんなオレにも居場所はあったんだってな。……よしか! 頼む、勝ってくれ!」

 

 

 

 

 

パシィィィッ!!

 

みやながさん、やっぱり強いなぁ。いくら読んでも、その上を読まれちゃう感じ。底が見えない。

 

ふう、暑い。そうだ、ハンカチハンカチ。コーチがくれた(ことにしよっと)このハンカチで、顔の汗を拭くのです。さて、ここからここから。

 

パチ。

 

 

 

 

 

ふうか「いい顔して指すわね。そう、それでいいのよ。楽しそうに、それでいて一手一手を味わうように、愛しむように。いつもの、いやいつも以上のいい顔よ、よしか。私は……去年までは勝利が全てだって思い込んでた。何が何でも勝てばいい、負けたら何も残らないって。互いに剣を取り、相手が血みどろになるまでメタメタに斬り続けて、最後に立っていれば勝ちなんだって。将棋って、そういうものだと思ってた。でもそんな風に、まるで生命の奪い合いのようにして勝ち続けたとしたら……。最後の勝者は、世界でたったひとりぼっちの孤独な存在になってしまうのよ」

 

 

 

 

 

パチ。

 

ふうかちゃん。見ててくれてる? 強くてカッコいい、頼りになるみんなの部長。ここまでこれたのも、ふうかちゃんのおかげだよ。ずっとずっと、私の友達でいてね。

 

よしかは、負けないのです!

 

バシッ!

 

 

 

 

 

ふうか「将棋は殺し合いなんかじゃない。それに気付かせてくれたのは、よしかだった。勝っても負けても相手を敬い、尊び、感謝の心を示し、濃密で充実した時間を共有できたことを分かち合おうとする、よしかの将棋。対局から少しでも多くのことを学び、吸収し、自分だけじゃない、相手をも成長させるような、心の豊かな将棋。それはまるで、心を…生命を……存在を共に輝かせあうような、純粋で豊潤な将棋! だからよしかと指した人は……局後、必ず笑顔になる。……ありがとう」

 

 

 

 

 

うーん、少し良くなったような気も……気のせいかな。でもなんとか食らい付けてる。もうちょっと、頑張らなきゃね。うわぁ、みやながさん、すごい気迫。普段とはまるで別人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コーチ……。まだいる。よかった。ちはちゃんのウィッグにコーチのハンカチ。うん、よしかはまだまだ頑張れるのです。

 

パッチンッ!

 

……こうやって熱戦を繰り広げている最中でも、他の事が脳裏をよぎるのは、まだまだ未熟な証拠なのかなぁ。今はそう、将棋そのもののコト。

 

将棋は面白い。一生を捧げてもいいくらい面白い。世の中にはいろんな人がいて、それぞれ価値観や習慣や言葉なんかも違っていて、それが原因でときどき衝突したりする。なのに将棋だったら同じ場所で一緒に遊ぶことができる。そこではいろんな感情が飛び交って、喜びも悲しみも、時に驚きだったり迷いや悩みだったり。こんなちっぽけな盤上なのに、ぜんぜんちっぽけじゃないことが次々と起こる。もうこれ、もうひとつの地球なのです。ここではいろんなものが違っていても、同じ喜びや感動を分けあえるのです。だって、将棋だもん。それくらいできちゃうのです。時を超えて日本に、いや世界に在り続ける尊くて愛おしい、みんなの将棋。今や教育に使われたりもするけれど、原点はやっぱりみんなで遊べるってこと。年齢も性別も国も人種も言葉も、全ての壁を乗り越えて、みんなが笑顔になる奇跡のゲーム!

 

でもね、将棋って適当に遊ぶより、真剣に遊んだ方が面白いのです。それはコーチやふうかちゃんが教えてくれたこと。研究して、対策して、努力して。強くなるためにやってることも全部楽しかったよ。誰かに勝つために一生懸命努力して、いつか追い越して。そしたら今度はその人が頑張って、追い越されて。そんな繰り返しでどんどん強くなって、ますます楽しくなって。将棋のことを深く知るようになって。爽やかな風を切って走る、気持ちのいい追いかけっこみたい。だから私は……思いっきり真剣に遊ぶんだ! 全力中の全力で! 本気中の本気で! 将棋を遊び尽くすのです!

 

バチィィィン!!

 

 

 

 

 

ちは「いっけぇぇぇええぇぇーーー!! よしかせんぱムグムグ」

 

ミツル「いくら観戦者の声が絶対聞こえない謎の対局空間だからって、絶叫はダメだぞ」

 

ちは「……ムグ…ぷっはぁぁ、でもでも、ちょっと形勢良くなってませんかぁっ!?」

 

ケイスケ「ああ。辛抱したかいがあったねー。これは……ゾクゾクしてきたよー」

 

 

 

 

 

みやながさんの指し手、表情、呼吸。嘘や偽りのない、真っ直ぐな目。嬉しいな。こんな私に、どこまでも真剣になってくれてる。それに対する私の返答は……もちろん真剣な言葉! 本気の一手!

 

伝わる! 伝わるよ! みやながさんの気持ちが! 私の気持ちも届いているのかな。そうだったらいいのにな。

 

ああ、もう将棋最高! 悠久の時を超えて、親から子へ、子から孫へ語り継がれてきた物語……。私も将来、結婚してお嫁さんになって、子供が産まれたら、絶対この幸せな物語……将棋を教えるのです。結婚のお相手は……やっぱりコーチがいいのです。えへへ/// コーチの子供……。えと……あれ?

 

じゃあコーチと……子供……つくる………………?

 

……………………………っっ!!??

 

 

 

ボボボボボボ……ッッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆ぜた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう表現するしかないくらい、この瞬間、全身が一兆℃に沸騰したかのような熱を帯びたのです。はわわっ、なにこれっ!? 身体の奥がゾクゾクする! なんかもう、恥ずかしくて……子供つくるとか……わけわかんないのですっ! え、ええええええ っちなのはいけないと思います!!!!

 

 

 

ダシィィィンッ!!

 

 

 

この異様なまでの高ぶりを、全エネルギーを盤上に向けるしか。そうしないと……溢れちゃいそう。考えるのは将棋のコトだけ! とにかく手を読むのです! 読む読む読む! ここがこーしてあーなって、そうなるとこうくる! う〜ん、考えるって楽しいな! 人間に生まれて良かったよ! 考えるって、悦びなんだ! もっと、もっと将棋を!

 

え!? 見える!? 今までで一番、手が見える! 読める! どこまでも、100手……200手……!? 数えられないくらい読めるのです! わぁ、すごい……!

 

そして目に映り込んできたのは今までに見たことのない、原始の風景。済み切った晴れ渡る青空。ギラギラ眩しく輝く太陽。地平線まで届きそうな広大な草原。綺麗……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちは「よしか先輩なんかおかしくなってますよぉ!? 顔なんか真っ赤になってちょっと艶っぽい感じだし! んで心ここにあらずみたいな!?」

 

ミツル「いや、あれでいい。あいつはあれで」

 

 

 

 

 

アキト「……きたか……ついに、この時が」

 

 

 

 

 

ふうか「覚醒、というわけね」

 

 

 

 

 

そして次に見えたのは真っ白な空間。かろうじて上下がわかるくらいの、なにもない真っ白なところ。

 

なんだろ、あれ?

 

…………扉?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おっきいなぁ。あ、声が聞こえる。

 

 

 

 

 

謎の声「知りたいか……? 真理を……。将棋の、真理を……」

 

よしか「えっと、それって……」

 

謎の声「この先には将棋の真理がある。行けば、お前は将棋と完全に同一化し、全ての真理を知ることができる。ここまで来た者には、その権利がある」

 

よしか「う〜〜〜ん……やめとくのです」

 

謎の声「何故だ?」

 

よしか「だって……私にとっての将棋は、そういうものじゃないから」

 

 

 

 

 

そう、真理とか完全解明とか、あんまり興味がないのです。とりあえず、大きな扉さんにはこう言ってあげました。

 

 

 

 

 

よしか「将棋はね、自分の頭で考えるから面白いんだよ」

 

 

 

 

 

ふわっと生温かい風のようなものが吹いたかと思ったら、真っ白な空間と謎の扉は消え去り、対局場に戻りました。目の前にはみやながさんと盤と駒。依然、形勢は悪……くない? 

 

みやながさん、さっきとは違って唇かんで苦しそうな表情。草原にいたときも、真っ白な空間で扉と話していたときも、無意識的に指してたんだ、私……。それで目の前の……大優勢な局面がある。

 

そして自覚します。すっごくふらふらになっている自分に。あ、まずい。いろんなことが頭の中で起こり過ぎて、糖分とかそういうのが足りなくなっているのです、たぶん。

 

最後まで持って。私の体力。そう、終盤で大切なのは金。コーチが教えてくれたのです。大切なものを守るために必要な駒。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、大切なものを手に入れるために必要な駒だって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぽやっとする頭で、どうにか落とさないように、ギュッと駒台の金を掴んで……。

 

ずっと憶えてるよ。忘れないよ……今日のこと、今までのこと、全部。ぽかぽか温かい大切な思い出。……ああ私は、こんなにも……幸せだったんだなぁ……。

 

大切な仲間に、対局してくれたみんなに、そしてコーチに、ありったけの心を込めて。

 

これが、最後の一手。

 

 

 

 

 

よしか「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みやなが「………け……した……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ? みやながさんの声がかすれて……。

 

……私、勝ったのかな? えと、みんなは……。歓声が……聞こえる、ような?

 

頭がぼんやりして……あ……。

 

 

 

 

 

ガタタッ……トサッ……。

 

 

 

 

 

痛い……? なんだろ、固くて冷たい感触?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

床、冷たいのです。やっぱり倒れちゃった。変なモノいっぱい見ちゃったからなぁ……。うー、だるい……。

 

 

 

 

 

ふうか「よしかっ! よしかぁっ! しっかりして! ほら、起きて! 勝ったのよ私たち! 優勝よ! あんたのおかげで……!」

 

アキト「ま、待てふうか。ヤバい症状かもしれないだろ。あんま揺らすなって!」

 

ちは「せぇぇんぱぁいっ! やだよぉぉっ! そんなの、せっかく勝ったのに! ふええぇぇっっ!!」

 

 

 

 

 

あはは、みんな心配してくれてる。大丈夫なのです。ちょっと、目眩がしただけだから……。あ、誰かが肩を抱き起こした。救急車でも呼ばれちゃうとおおごとだから、ちょっと無理して目を開けてみる。やっぱりふうかちゃんだ。ふふ、そんなに心配そうな顔、初めて見たかも。……ぽた。頬に水滴が。あ……なみだ……?

 

 

 

 

 

ふうか「よしかっ! 気付いたの!? どこが痛いの!? 大丈夫!?」

 

よしか「…………た、対局は…」

 

ふうか「勝ったわよ! よしかの大活躍で、私たちの優勝! 全国に行けるわよっ!」

 

よしか「そっか、嬉しいな……ぶいっ」

 

ふうか「ぶいじゃないわよもうっ!」

 

 

 

 

 

身体はもう大丈夫……とまでは言えないけど、なんとかなる。私は立ち上がり、周囲を見渡します。チームメイトからも他校生からも、たくさんの拍手と笑顔で祝福されました。パチパチパチと、いつまでも拍手は鳴りやみません。えへへ、なんだか恥ずかしいよぉ。ありがとう。本当にありがとう。

 

でもひとりだけ……一番会いたい人がいません。

 

どこだろ? ……いない。

 

 

 

 

 

ショウイチ「おめでとうございます! ハンカチ王女〜、ばんざーい!」

 

よしか「(なにそれまあいいや)ねえショウイチくん、コーチはどこ?」

 

ショウイチ「へ? コーチ?」

 

ふうか「なに言ってるのよしか。うちの将棋部にはコーチなんていないわよ?」

 

よしか「…………」

 

アキト「そうだぜ。顧問はいるけど、部活には来ない人だし。……ま、コーチの人がいればもうちょっと楽に強くなれたんかもしれねーけど。それでもよ、弱小将棋部でも、オレ達だけで一生懸命強くなったんだ。これってすげくね?」

 

ちは「せんぱぁい! ドキッとさせないで下さいよぉ! まだ体調悪いんじゃないですかぁ?」

 

よしか「……違う。違うのみんな……。コーチは、コーチはね……」

 

シュウ「そんなことより表彰式が始まるのだよ。席に着こう」

 

 

 

 

 

なんで……。なんでみんな忘れているの……?

 

あんなに一緒に居て、たくさんのことを親身になって教えてくれたコーチだよ? なんで初めから居なかったように忘れているの!?

 

おかしい……。何か予感めいたものが頭の中を駆け巡ります。コーチは、居なくなってなんかない。まだ……まだ居る! まだ日は落ちていない!

 

 

 

 

 

アナウンス「……そして団体戦第一位は…」

 

アキト「なにぃ!? よしかがいねぇぞおい!」

 

ちは「えええええっ!? この栄光の瞬間にどこ行ったですかぁぁぁぁ!?」

 

ふうか「ったく、世話の焼ける子ねっ! 探しに行くわよ!」

 

ショウイチ「我々親衛隊もお供しますぞ〜〜!」

 

シュウ「だがどこへ!? 手掛かりはあるのか?」

 

ふうか「こういうときはね……」

 

ミツル「こういうときは……?」

 

ふうか「屋上って相場が決まってるのよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アナウンス「…………なにぃぃっ!? 優勝校の生徒がいない!? 一体どこへ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たったったったったったったったったったった…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんねみんな……。

 

でも私、行かなくちゃ……。

 

コーチに会いに。

 

会って、優勝したよって、私頑張ったよって言うんだ。

 

そしたらきっと、頭なでなでしてめちゃくちゃ褒めてくれるのです。いつものように、優しい笑顔で。

 

だから待ってて。

 

消えないで……コーチ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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