タルティーン司令部戦略課室長日誌

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2014年04月03日の記事

ドラえもん 新・のび太の大魔境 〜ペコと5人の探検隊〜

14日、『映画ドラえもん 新・のび太の大魔境 〜ペコと人の探検隊〜』を観てきました。

 

映画ドラえもん 新・のび太の大魔境〜ペコと5人の探検隊〜
http://doraeiga.com/2014/

 

丁寧にブラッシュアップされたリメイクです。

 

本作は1982年に公開された『ドラえもん のび太の大魔境』のリメイク作になります。

 

『ドラえもん のび太の大魔境』(日本、1982年、西牧秀夫監督)

 

そして、物語はほとんど旧作に同じです。

 

ですが、

旧作を観ている観ていないに関わらず、

お勧めできる映画です。

 

基本的にリメイク作というものは、旧作と比較される運命にあります。
それ故に、敢えて旧作とは別物を作るというのがある意味では正解でもあり、映画に限らず多くの作品では旧作のイメージを壊す方向で進められていきます。

 

これに対して本作は、むしろ旧作や原作を真正面から構え、より良いものへと構築するスタンスで作られています。
そしてそれは見事に成功していると言えます。

 

 

内容はタイトルが示す通り、冒険譚になります。
魔境と言うだけあって謎の遺跡(のようなもの)が登場するなど、『インディ・ジョーンズ』シリーズを髣髴させるシノプシスです。
秘境探検に憧れる主人公たち。それと前後して、主人公のび太はノラ犬を拾い、紆余曲折の末、ペコと名付けたその犬とともに探検隊を組んでアフリカのジャングルに向かう…というものがあらすじになります。

 

原作および旧作の段階からそうでしたが、ある意味でひじょうに原作者藤子・F・不二雄らしい作品と言えます。
藤子FがSF作家であることはよく知られていますが、本作はその舞台となる秘境の設定として、なにゆえに何人も立ち入れず、その詳細を知ることができないのかという根拠に「ヘビー・スモーカーズ・フォレスト」という、厚い雲に覆われ、地理的にも周囲から隔離された森としました。人工衛星に掛かる背景などはある程度科学的な印象を持たせてあり、SF的な要素があると言えます。
また、微ネタバレになりますが、物語全体を覆う時間軸にも本作の肝腎となる伏線があり、こうした時空間を用いたトリックは藤子Fの真骨頂でもあります。
これらを総合的に見ると、今作にこの作品を選んだことは、前作『のび太のひみつ道具博物館』に引き続き、原作者であり故人である藤子Fへの敬意が強く感じられると思えてきます。

 

 

以下、ネタバレを含みます。

 

 

基本的に旧作からの変更点は、改良と感じられるものばかりに思えました
そして、それらの変更によって特に感じられるのは、原作や旧作よりも強い説得力です。

 

例えば終盤での戦いでは、探検シーンで使われたひみつ道具がそのまま各自の武器として扱われ、伏線としてのメリハリが明確になりました。
また、のび太サベールの一騎打ちでは、電光丸の電池切れという演出が挿入され、これによりのび太“後が無い決死の戦い”が押し出されることになりました。直前のジャイアンの覚悟等とリンクした、説得力ある演出です。

 

この「後が無い」というのは本作全編でたびたび用いられるモティーフです。
言葉として明確に登場するものではありませんが、ジャイアンの提案(というには横暴ではありましたが)によってひみつ道具の多くが封じられ、さらに成行きからどこでもドアが使えなくなるといったことで、まずはジャングルからの帰還や退路が事実上消滅します。彼らにとってアテとなるのは最早バウワンコの遺跡しかなくなるわけですから、その場所がどのようなところであるかに関わらず進まぬわけにはいかなくなるんですね。
これは結果としてジャイアン自身の心身をも追い詰めていきます。自分の言動が招いた故に仲間の相談することもできず、ペコ「俺はどうしたらいいんだ!」と泣きつくシーンはこの象徴と言えます。
この流れは終盤、ペコことクンタック王子ドラえもんたちを逃して単身で死を賭した戦いに挑む場面でジャイアンが自ら退路を断り、彼のあとを追う伏線へと繋がっていきます。
ここでも旧作からの変更点として、ジャイアンがペコを殴るシーンが追加されました。この時点ではドラえもんたちは彼らを追い掛けていませんから、ジャイアンが戻ってこられる可能性はまずありません。自らの言動によって招いた一連の贖罪も含めた、ジャイアンの強い覚悟を描く上で、ひじょうに説得力のあるものになったと思います。

 

 

うまい演出はこうした点に留まりません。
原作の『ドラえもん』には、おやくそく的なものとして小学生向けえっちシーンとも呼べるしずかの入浴シーン等がありました。
諸々の事情から、いわゆる“わさび版ドラえもん”ではこうした演出は著しく減少するものとなりましたが、今作『新・のび太の大魔境 〜ペコと人の探検隊〜』では“描かないけれどもえっち”という演出を随所に盛り込んでいます。
賛否はあるかもしれませんが、私にはこれも原作への敬意が感じ取れるものに見えました。可能であろうかたちで演出していこうという、制作側の努力を感じます。

 

 

また、本作に限りませんが昨今の作品では旧作の時代に比べて制作上の技術力が格段に向上したことからCGを用いることができるようになりました。
今作ではバウワンコの巨神像空飛ぶ船等に用いられていますが、敢えてコマ数を減らすという描き方をしています。これにより、手描きのアニメーションとの親和性を図っています。
巨神像空飛ぶ船も大型のオブジェクトですから、大きな動きほど処理落ち感が強く、ともすればチープに感じられてしまうかもしれません。しかしそのリスクを負ってでも、手描きとの親和性を優先させた作りに、むしろ丁寧な制作スタンスを感じ取ることができました。

 

 

こうした全てを見るに、本作は30年以上の歳月を掛けて丁寧にブラッシュアップをして完成させた藤子F作品という印象を受けました。

 

 

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