タルティーン司令部戦略課室長日誌

ここだけで読める、戦略課の秘話その他。

2014年01月03日の記事

プレーンズ

日、『プレーンズ』を観てきました。

 

プレーンズ
http://www.disney.co.jp/planes/

 

美談で終わらせないところに

本作の良さがあります。

 

本作は『カーズ』シリーズスピンオフとして位置付けられたDCGアニメーション作品です。
『カーズ』はクルマの世界でしたが、その世界観をそのまま飛行機に置き換えた…というか拡張したもので、擬人化された乗り物全般が暮らしています。

 

じつは『カーズ』はシオンにとって好きな映画作品のひとつです。
特に評価したのは、その世界観の構成です。私たちは当然ではありますが、クルマ達の暮らす世界というものを知りません。しかし、もしもクルマに生命が宿り、人が暮らす社会のようにクルマ達が生きていたのだとすればこんな世の中なのだろうという世界が『カーズ』にはありました。
乗り物の擬人化自体は『機関車トーマス』シリーズ等、枚挙に暇はありませんが、人も動物もそのすべてが乗り物に置き換えられた世界を描いた物語はあまり見られず、そうした観点で興味深いと感じたのでした。

 

『プレーンズ』は厳密には『カーズ』とは別の、いわば“並行世界”のようなものに位置付けられます。もともとは『カーズ』シリーズの短編として、レッカー車のメーターが見た夢に登場した世界だからです。それ故か、本作には『カーズ』の主要キャラクターは出てきません。
コンピュータ用語では分岐したモノをフォーク(Fork)と呼びます。言うなれば『プレーンズ』は『カーズ』のフォークとも呼べる訳ですが、『プレーンズ』の世界を占めるクルマの多くがフォークリフト(forklift truck)であるのは、もしかしたらCG技術チームの洒落が入っているのかもしれませんね。

 

本作の主人公は農業用飛行機のダスティ・クロップホッパー。レーサーを夢見るものの基本設計はレース用ではなく、しかも高所恐怖症。
そんな彼が世界一周レースを目指すという物語です。

 

 

以下、ネタバレを含みます。

 

 

落ちこぼれが大きな夢を持ち、それに向かって走り、実現する。そういった物語は無数にあります。
劇中も、他の実在作品を引き合いに「落ちこぼれが這い上がる物語ってウケるんだよな」と皮肉る台詞が登場し、思わず笑ってしまいました。

 

私も、それだけで終わる話であれば、さほど高評価はしなかったと思います。
本作は、ある意味でディズニーらしからぬ、歴史の“負の部分”にも触れている等、幅の広い内容となっているところが素晴らしいと言えます。
後に別記事で書く予定の、邦画『永遠の0』を「もうひとつの『風立ちぬ』」と呼ぶならば、『プレーンズ』は「宮崎駿に捧げるオマージュ」といった印象を私は受けました。

 

主人公のダスティは、かつて海軍で活躍していたとされる戦闘機スキッパーに、飛び方について師事を仰ぎに行きます。
噂では50機を撃墜したと噂されたスキッパーでしたが、レースの最中に空母に助けられたダスティは、そこでスキッパーの真実を知ることになります。
教官スキッパーの戦歴は度だけ。戦闘で多くの部下を失った彼は、空を飛ぶことが出来なくなっていたのでした。

 

これは奇しくも『永遠の0』とは対にある構図です。また、その向こう側には『紅の豚』的な光景も見える気がします。
戦闘機スキッパーを主人公の教官に据えてきれいごとで終わらせず、戦争という負の部分を描いているところに、私は衝撃を受けました。

 

 

伏線もしっかりしており、ダスティが他のレーサーを助けていく展開が、終盤のどんでん返しに活きています。
『ロッキー』を引き合いに「這い上がる物語」を皮肉るだけあって、最後はきちんと勝ってくれるところも快いです。
カミソリ”の伏線に、私は『爆走兄弟レツ&ゴー』を髣髴しましたが…、これは考え過ぎでしょうかね。(^^;;;

 

違法燃料によるドーピングをネタにしていたりと、意外とオトナの事情も物語に組み込まれているなど、『モンスターズ・ユニバーシティ』『シュガー・ラッシュ』とは別の意味で子どもも大人も楽しめる作品で、好印象でした。

 

 

なお、本作は上映される国や地域によって異なるバージョンを持っています。
日本国内で上映される版には日本機のサクラが登場しますが、これは版によっては他のキャラクターに差し替えられています。それらの機の名前だけはレースのランキングスコアボードで確認することができるのですが、シーンとしてはそれぞれで異なる訳ですから、当該キャラクターと接触する場面を独立して制作し、物語全体としても辻褄を合わせる必要があります。
これは意外と手間ではないかと感じました。

 

それもあってか、全体のリソース量を計算しつつ製作されている印象はあります。
そのひとつとして、本作では可能な限り反射シェーダを抑えているように思えました。
また、レース会場のモブ等も単純化したモデルを雛形として多数配置することで処理しており、レンダリングに長時間を要するような箇所をできる限り最小限にしているようでした。
CGのリソースを計算しつつ…という製作は20世紀フォックス『ブルー』にも強く感じられたことでしたが、今後のDCGアニメーションはそうした方向に進んでいくのかもしれませんね。

 

 

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