タルティーン司令部戦略課室長日誌

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2013年03月16日の記事

ドラえもん のび太のひみつ道具博物館

 

『ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』を観てきました。

 

ドラえもん のび太のひみつ道具博物館(ミュージアム)
http://doraeiga.com/2013/

 

博物館」と書いて「ミュージアム」と読ませています。
漢語ではなく横文字であることが、エンディング主題歌にある耳に心地よい「ミュージアム」連呼に繋がっています。

 

ドラえもんの映画をこうして観るのはじつに30余年振りでしょうか。第作目『のび太の恐竜』からだいぶ経ちました。
恐らく初めて劇場で観た映画であり、また、今は亡くなった祖母に買ってもらった原作本(私の記憶が間違っていなければ、マンガ雑誌の体裁で印刷されたものだった)はボロボロなるまで兄弟で長い間まわし読みしていたこともあり、思い出の作品でした。

 

 

さて本作『ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』の感想ですが、この構成には好き嫌いがわかれるかもしれない。そんな気がしました。
というのもこの映画。100分ばかりの尺ではありますが、そのうちの/ほどが要するに「長い長い前振り」です。それでいながら物語はとんとん拍子に進んでいく。
ラストで一気に伏線回収。それまでに登場したひみつ道具や展開がここで帰結していきます。
ですから伏線自体はみごとに組まれています。そこに到るまでの流れを良しととるか悪しととるか、ここは観る人の趣味によりそうだと思われました。

 

うん、こんな構成の作品。ひじょうに有名なものに『不思議の国のアリス』、とくに近年の映画作品『アリス・イン・ワンダーランド』がありましたね。
確かにそんな感じ。中盤あたりまで、次々と場面が変化していく展開は、まさに『アリス』そのものです。

 

 

それから、伏線とは違うでしょうが、“知っている人は知っている”的なネタが散りばめられています。
気が利いていると思ったのは博物館ロボット館でのシーン。「きこりの泉」が紹介された次に「コピーロボット」が出てくるコンボは面白い。
きこりの泉」と言えばドラファンは当然あのネタを期待しますよね

 

御存知、きれいなジャイアン。

 

きこりの泉」にジャイアンが放り込まれない。ちぇっ、残念だ(ぉぃ)と思ったところで「イケメンコピーロボット」によるきれいなジャイアン登場。
制作者さん方、わかってらっしゃる。(笑)

 

 

ところで本作には回想シーンのみで登場するハルトマン博士という人物が出てきます。キーキャラクターである博物館のガイド少年クルトの祖父ですが、物語では彼が「どこでもドア」を発明したとされています。
22世紀であっても『ドラえもん』の世界観に於いては人間の寿命はそう長くはなっていないようですし、そうすると「どこでもドア」の発明は(劇中の時制から見て)そう古くはなさそうです。

 

そんなに新しい話なの?…と思われる方もいるかもしれませんが、これ、原作にほぼ忠実なんですね。
原作を知る人にはそれを思い起こさせるかのように、宇宙館では「天の川鉄道」がチョイ役で登場。
藤子・F・不二雄の原作には「どこでもドア」の登場により「天の川鉄道」が廃止されるという話がありました。

 

 

ミステリ要素もありますが、これは本気でミステリを求める人にはお勧めできません。
ですが、のび太の纏う「シャーロック・ホームズセット」ってもともとそういうモノなんですね。原作でもドラえもんのどらやきのありかを捜すのに「どらやきは丸い、丸いはお月さま、お月さまは0点、0点はのび太。どらやきはのび太の腹の中」などという、奇天烈な推理を展開する道具だったりするのです。
その辺りの洒落が理解できないと、何だこりゃと思われるかもしれません。

 

 

かように、全体を通して改めてみると、藤子原作を壊さぬように構成されていることに気付かされます。
そしてその頂点とも言えるものがラストで登場する“怪盗ドラックス”。これは単に怪盗DXのスーツの伏線回収であるばかりではなく、藤子原作にある「人体とりかえ機」のオマージュでもあるんですね。

 

のび太からしずかの脚を奪ったドラえもん。

 

博物館に入った後、ひょんな事故により四次元ポケットに「スッポンロボ」がすみついてしまい、以後は事実上ポケットが封印状態になってしまうドラえもん
ただでさえ身体コンプレックスを抱えているのに、ひみつ道具がすべて封じられてしまった彼はもはや何の役にも立たないダメロボット。そんなフラストレーションを晴らすかのごとく、スクリーン狭しと舞いまくる“怪盗ドラックス”の姿は痛快です。
しかも、ドラえもんがロボットであることを思えば、このシーンって実はロボット対戦なんですよね。

 

 

クルトが半熟技術者であるという立ち位置も良いです。
ひみつ道具の素材はハルトマン博士の手によって生み出されたフルメタルという超金属。物語の終盤、ある事件…というか事故により博物館内にあるすべてのフルメタルが消滅してしまう。
ドラえもん自体はひみつ道具ではないものの、ドラえもんポケットにあるものはひみつ道具でありフルメタル製。すみついていたスッポンロボもろとも消えてしまう中、彼らに残された道具はフルメタル使用の免許を持たないクルトの手によるおかしなアイテム群。

 

しかしこの場面も設定伏線の回収に留まらず、クルト自身が自分のとりえ ─ それは存在理由とも言い替えられる ─ に気付く瞬間です。

本作ではクルトが色んな意味でキーキャラクターとして立ちまわりますが、これはそこに込められているメッセージのような気がしました。

 

 

理由と言えば。

 

次第に明かされる、ドラえもんが鈴にこだわる理由
最後、半分にされたのもう一方が見付かったとき、のび太は自身のつぶやきからその理由を思い出します。
ドラえもんポケットは劇中、何でも出てくるけれども何も出すことのできないものでした。
のび太の靴は何も出てこないけれども大切なものが出てくるものだったのです。

 

大切なものが出てくる靴。
ひょっとしてこれは原作中の隠れた名作「赤いくつの女の子」のオマージュだったり…?

 

 

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