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2008年09月01日の記事

昔死んだ人(68)マラン・メルセンヌ

マラン・メルセンヌ(Marin Mersenne,Marin Mersennus or le Père Mersenne )、1648年9月1日、没、

享年59歳。

 

フランスの修道士。とは云え、神学者にして、哲学者、数学者、音楽理論家

数学の世界では、メルセンヌ数メルセンヌ素数が有名だが、

音楽の世界では、「音響学の父」とも呼ばれ、音律に関する理論書も多い。

 

これは、15世紀から18世紀の世界に於いては、不思議な事ではない。

「神」の創りし「世界」は、秩序に満ち溢れ、それはピタゴラス、プラトン、アリストテレス以来の、

数学や音律に、世界の秩序を求める傾向が強いからである。

 

Web上ではgoogleで「メルセンヌ」を検索すると、

「メルセンヌ数」、「メルセンヌ・ツイスター」、「メルセンヌ素数」などが出てきて、

マラン・メルセンヌ自身の記事は後回しである。

 

これは、仕方ない事なのかもしれない。

「メルセンヌ数」或いは「メルセンヌ素数」は、素数探索家にとり、非常に基本的概念であるから。

 

学問の世界に於いて、メルセンヌが果たした役割は小さくない

今ほど、通信手段が発達しておらず、研究者間の書簡のやり取りや議論が困難だった時代、

メルセンヌは、当代の一流の研究者、思索者達と広い交流を維持しており、

これが、パリ科学アカデミーへと発展してゆくのである。

 

当時の、メルセンヌの交際範囲は判っているだけでも、ルネ・デカルト

エティエンヌ・パスカルブレーズ・パスカルの父)、

ジル・ド・ロベルヴァル(ロベルヴァルのジル・ペルセンヌ:数学特に微積分学)、

ニコラ=クロード・ファブリ・ド・ペーレスク(天文学者)、イタリアの音楽理論家ジョヴァンニ・ドニ

オランダの詩人で作曲家のコンスタンティン・ホイヘンス

(天文学者クリスティアーン・ホイヘンスの父)、

イタリアの哲学者トマゾ・カンパネッラ等が挙げられ、その後の多くの学問に影響を及ぼした。

 

勿論、メルセンヌ自身も研究者としては一流であり、多くの業績を残している。

 

<数学>

ユークリッド以来、素数を表す式や大きな素数の探索は続けられていた。

カタルディ、デカルト、フェルマー、そして、メルセンヌ。

特に2n - 1 の形式の整数が素数かどうかは非常に興味が持たれていた。

 

1588年、カタルディはn=17(131071)、n=19(524287)は素数である事を示している。

尤も、カタルディ自身はn=23,29,31,37も素数だと誤った主張もしているが。

 

1640年、フェルマーは、

 

nが奇数の素数であれば、2n - 1 は2kn+1の形の約数を持つ事を証明している。

 

その後、メルセンヌの業績を挟んで、フレニクル、ライプニッツ、オイラー、……と、

そうそうたるメンバーが大きな素数の発見や判定方法の研究を進めており、

コンピュータの使用が始まる前のこの形式の最大素数は、

1876年ルーカスの示した、

 

n=127(170141183460469231731687303715884105727)

 

である。

 

フェリエは1951年、この形式を変形した素数、

 

(2148 - 1)/17:

(20988936657440586486151264256610222593863921)

 

を発見している。

 

以後は、コンピュータの速度競争やアルゴリズムの優劣判定、公開暗号キー等に使用されるようになる。

 

では、メルセンヌが果たした役割とは何か。

1644年"Cogitata Physico-Mathematica "に於いて、

 

 2n - 1 の整数について、n=2,3,5,7,13,19,31,67,127,257

 については素数であるが、それ以外の257未満の正の整数の場合は合成数

 である

 

と述べた。

この業績で、次の様な定義が為されている。

 

 定義:2n - 1 が素数ならば、これをメルセンヌ素数と呼ぶ。

 

ただし、メルセンヌは全てを完全に調べた訳ではなく、

n=31が素数である事を証明したのは、100年後のオイラーであるし、

更に100年後、n=127が素数である事はルーカスが証明した

また、同時期にパヴシンn=61が見逃されている事を発見し、

パワーズn=89,107が見逃されている事を発見している。

 

結局1947年に、

 

メルセンヌ素数はn=2,3,5,7,13,17,19,31,61,89,107,127

 

が確認された。

 

メルセンヌ素数が注目されるのは、完全数とも関係が深いからである。

2n−1 (2n - 1 )の形式の整数で、

n=2,3,5,7について、それぞれ完全数6,28,496,8128が対応する

 

これに関しては、以下の様な定理が証明されている。

 

 定理1:2n−1 (2n - 1 )の形式の整数が完全数になるのは2n - 1が、

      素数の時に限る。

 

 定理2:2n - 1が素数ならnも素数である。

 

整数論は、切りがないのでこの辺で切り上げるが、

1644年の統合的な示唆に富む著作が、メルセンヌの名前を数学史に刻む事になった。

 

<音律/音学理論>

音律の歴史を紐解けば、既にピタゴラスにより「純正5度」による音階、

周波数比2:3の12音階が見つかっている。

(3/2)12 ≒ (2/1)7 とすれば、

 

 C - C# - D -Eb - E - F - F# - G - G# - A - Bb - B (- C)

 

が得られる。

 

その後、この音律は更に精緻な修正を加えられ、

メルセンヌは1636年に"Harmonie universelle"に於いて、

オクターブを20000000:1000000として、ほぼ完璧に平均律を記述する。

 

メルセンヌが示した音階をセント値で表すと、半音幅が全て均一になる

その為、長三和音では完全5度が700セント、長3度は400セント、

短三和音では完全5度が700セント、短3度は300セントとなる。

 

これには2の12乗根の計算が必要であり、メルセンヌの数学的素養は、音律にも生かされている。

 

これにより、バロック時代の不協和音はかなり是正される事になる。

 

しかし、この均一すぎる音律には調性が存在せず、平均律3度の音程では不協和な音程になる。

(そう言いつつも、全く耳障りでない事は不思議である)

 

いずれにせよ、メルセンヌが、音律の明確な理論を、確立した事だけは確かである。

 

参考文献:クリス・カルドウェル『素数大百科』(共立出版:2004)

       http://www.mimasaka.ac.jp/intro/bulletin/1997/iwata97.htm

       http://www-history.mcs.st-andrews.ac.uk/Mathematicians/Mersenne.html

             (メルセンヌの著作リストなどが豊富で、マラン・メルセンヌの理解には有用なサイト)

       http://en.wikipedia.org/wiki/Marin_Mersenne(日本語頁は参考にならない)

       

 

今日が命日の人:

 

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 1873年 八田知紀
 1915年 井上 馨
 1923年 富田木歩 (関東大震災により死亡)
 1934年 竹久 夢二
 1953年 ジャック・ティボー (Jacques Thibaud)
 1957年 杉 狂児
 1988年 ルイス・アルバレズ (Luis Walter Alvarez)
 1990年 エドウィン・ライシャワー (Edwin Reischauer)
 2003年 ジャック・スマイト (Jack Smight)
 2006年 小林 久三

       

 

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